奇妙な手紙

 それは、逢魔が刻の事。扉に造り付けられた郵便受けがコトリと小さな音を立てる。
 バイクのエンジン音を聞いた覚えも無い。この刻限に郵便物が届けられた事など、かつて無かったはずだが……。手にした紙片には、横文字の走り書きがあり見知らぬ切手が貼られていた。しかし、どこを探してもこの館の住所は記されていない。
 ── 一体、誰が、どのような目的で……?
 裏に返せば、まるで私生活を覗き知られているような脅迫とも取れる文面が紙一面にびっしりと書かれている。住所が書かれていないということは、差出人は直接我が家の郵便受けに投函したのだろう。
 ── 直ぐ、傍に、扉の一枚隔てた直ぐそこに誰かがいたのだ。我が家の内情に通じた何者かが。
一体、誰が……? 何故……。